スーツは福利厚生費として認められる?メリット・デメリットや注意点も解説
スーツを着用する機会の多い従業員がいる場合、スーツ支給に関連する福利厚生サービスを導入したいと考えている経営者さまもいらっしゃるのではないでしょうか。
スーツ関連の福利厚生を提供できれば、会社・従業員側の双方で、大きな恩恵を受けられる可能性があります。
しかし、スーツを会社の福利厚生とするには、さまざまな条件を満たさなければなりません。
そこでこの記事では「スーツの支給・貸与が会社の福利厚生サービスとして導入できるか」について解説します。
導入した際の企業側と従業員側のメリット・デメリットもあわせてご紹介するため、参考にしてください。
目次
1. スーツの支給・貸与は福利厚生として認められる?
1-1. そもそも福利厚生とは?
1-2. スーツの支給・貸与は福利厚生として認められないケースが多い理由
1-2-1. 理由1:私用できないことを証明できないため
1-2-2. 理由2:対象となる従業員全員に支給されない可能性があるため
1-3. スーツの支給・貸与が福利厚生として認められなかった事例
3. 福利厚生としてスーツを支給・貸与するメリット
3-1. 企業側のメリット
3-2. 従業員側のメリット
4. 福利厚生としてスーツを支給・貸与するデメリット
4-1. 企業側のデメリット
4-2. 従業員側のデメリット
5. 福利厚生としてスーツを支給・貸与する際の注意点
5-1. スーツ代そのものを支給しない
5-2. 体型に合ったスーツを仕立ててもらう
5-3. メンテナンス方法を周知する
6. スーツを福利厚生の一環として導入するなら「SUIT BENEFIT」がおすすめ
1. スーツの支給・貸与は福利厚生として認められる?
スーツの支給や貸与は、福利厚生として認められるのは難しいといえます。
その理由を、福利厚生の定義・根拠・前例の3つの観点から確認しておきましょう。
1-1. そもそも福利厚生とは?
福利厚生とは、給与や賞与以外の形で、企業から従業員へ向けて提供されるサービスを指すことばです。
健康保険料や雇用保険料などの「法定福利厚生」と、企業独自のサポートを提供できる「法定外福利厚生」の2種類に大別できます。
会計処理の際に「福利厚生費」として経費計上・会計処理できるサービスは、福利厚生として提供が可能です。
スーツは業務上必要なことも多く、購入費用を経費計上できるのではないかと考える方も少なくないアイテムです。
福利厚生費として計上するためには、企業側が制服として統一的なデザイン・形状・品質のスーツを用意し支給・貸与する形を取ることが求められます。
しかしそのような基準に該当していないスーツは、福利厚生費で計上できないケースが多いようです。
「福利厚生とは?種類とその具体例・導入時のポイントを解説!」でも福利厚生の内容をさらに詳しく解説しているため、あわせて参考にしてください。
1-2. スーツの支給・貸与は福利厚生として認められないケースが多い理由
福利厚生サービスとしてスーツを支給・貸与するには、私用できないことを証明したり、対象となる従業員全員へ支給したりする必要があります。
どのようなポイントがあるのか、国税庁の見解も交えてご紹介します。
1-2-1. 理由1:私用できないことを証明できないため
国税庁は、経費計上して非課税にできる背広について、下記のとおり見解を示しています。
専ら勤務する場所において通常の職務を行う上で着用するもので、私用には着用しない又は着用できないものであること |
引用:国税庁「背広の支給による経済的利益」
一般的なスーツの場合、通勤時や休日(結婚式をはじめとしたフォーマルな場への参加時)にも着用できてしまいます。
仮に「福利厚生サービスを利用して購入したスーツを私用しない」と社内で約束を交わしたとしても、実際に私用していないことを証明できなければなりません。
そのため経費計上するためには、毎日の記録を取り保管しておくか、あらかじめ私用できないデザインで仕立てることが求められるでしょう。
業務外で着用できないデザインとしては、たとえば下記のような工夫ができます。
- 一見してわかる大きさで、目立つ場所に社名が名入れされている
- 一見で制服とわかる形状・配色で仕立てている
1-2-2. 理由2:対象となる従業員全員に支給されない可能性があるため
福利厚生費として計上し非課税にするには、国税庁によって示されている、下記の基準をクリアしなければなりません。
事務服等の支給又は貸与が、その職場に属する者の全員又は一定の仕事に従事する者の全員を対象として行われるものであること、(更に厳格にいえば、それを着用する者がそれにより一見して特定の職員又は特定雇用主の従業員であることが判別できるものであること)が必要である |
引用:国税庁「背広の支給による経済的利益」
例えば、希望者のみを対象としてスーツを支給・貸与する場合は、福利厚生費として計上できません。
福利厚生サービスとして運用するには、職場全員または特定の職種に従事する全員を対象として提供される必要があります。
1-3. スーツの支給・貸与が福利厚生として認められなかった事例
「スーツの購入代金を福利厚生費に含めるか」を巡り、1974年にある判例が出されています。
この判例は、大学教授の確定申告と課税対象にまつわる訴訟に対するものです。
業務に際して必要な被服費・クリーニング代・散髪代などを経費に含められるかが取り上げられ、下記のとおり判決が下されました。
(イ) 原告主張の被服費、クリーニング代・散髪代 これらは、いずれも家事費に属する。(中略)被服は個人の趣味嗜好によつてその種類、品質、数量等を異にし、その耐用年数についても個人差があるので、たとえ勤務時に着用する被服であつても、必要経費に属する部分を一義的に測定することはできない。(中略)少くとも、教育研究者である原告の場合には、その主張する被服費は、全部家事費に属する |
引用:裁判所「裁判例結果詳細 京都地方裁判所昭和41(行ウ)10 所得税決定処分取消請求事件」
家事費とは、生活のために使っている費用を指すため、経費として処理ができません。
このような前例があるために、スーツの購入費用は経費にできないと判断されるケースが多いようです。
したがって、会社側も福利厚生費として処理できず、福利厚生サービスとして提供できないと考えられています。
しかし、2012年度の税制改正により、控除(特定支出控除)に含められる項目に「衣服費」(制服、事務服、作業服その他の勤務場所において着用することが必要とされる衣服を購入するための費用)が追加されました。
この法改正を受けて、スーツを福利厚生費として計上できる余地があるとする意見もあります。
2. スーツ代が福利厚生費として認められやすいケース
福利厚生費に含められるスーツの例として、ホテル勤務のベルボーイが挙げられるでしょう。
従業員全員に支給され、統一的なデザイン・形状をした制服的なスーツなら、福利厚生費に含められる可能性があります。
個人で購入してきたスーツというより、貸与する形なら福利厚生としてスーツ支給・補助も可能といえるでしょう。
また、先ほどご紹介した大学教授による必要経費に関する裁判の判決には、下記の言及が見られます。
特殊の職業に従事する給与所得者、例えば、警察職員、刑務職員、消防職員などが着用を強制され、かつ、職務を遂行する場合以外では着用されない制服、作業衣等は必要経費に当たるともいえるが、これら被服は一般に使用者において支給しているのがわが国の実情である |
引用:裁判所「裁判例結果詳細 京都地方裁判所昭和41(行ウ)10 所得税決定処分取消請求事件」
上記の判決から警察署・刑務所・消防署などの制服と同等の水準でなければ、スーツを経費として計上することは難しいと考えられるでしょう。
3. 福利厚生としてスーツを支給・貸与するメリット
条件をクリアし、福利厚生としてスーツを支給・貸与できるようになると、企業・従業員それぞれにメリットがあります。
双方の視点から、メリットをご紹介します。
3-1. 企業側のメリット
企業としては、主に以下のメリットが得られるでしょう。
- 従業員が体型に合った良質なスーツを着用できるようになり、取引先企業からの印象が上がる
- 不満に思われがちなスーツ購入費用の負担に理解を示すことで、他社との差別化ができ、求人への応募率が改善できる可能性が高くなる
- 従業員の不満を解消でき、満足度が上がることで離職率を下げられる可能性がある
- 福利厚生費として計上できれば法人税の節税につながる
社内外に対して、企業としての印象が向上する効果を期待できます。
また経費計上できれば法人税を節税できるため、税金対策としても有効です。
3-2. 従業員側のメリット
一方、従業員にとっては、下記のメリットが得られるでしょう。
- 業務で使うものを、全額自腹で購入せずに済む
- 福利厚生サービスの内容によっては、シャツ・シューズ・ベルトなどもお得に購入できる可能性がある
- オーダーメイドやセミオーダーなどを利用し、同じ予算でより高品質のものを購入できるようになり、モチベーションが上がる
- 取引先へ与える印象がよくなり、業務を円滑に進めやすくなる
金銭的な負担を軽減できるとともに、業務をより円滑に進めるためにも効果を発揮する場合があります。
従業員がより意欲的に仕事へ取り組めるようになる、メリットの大きな福利厚生的サービスと感じてもらえる可能性は高いでしょう。
4. 福利厚生としてスーツを支給・貸与するデメリット
福利厚生としてスーツを支給・貸与する場合、同時にデメリットも生じてしまいます。
こちらも企業側・従業員側それぞれの視点からご紹介するため、ひととおり把握しておきましょう。
4-1. 企業側のデメリット
スーツに限らず、福利厚生サービスを導入すると、企業には金銭的な負担が生じます。
施設との契約、物品の購入、福利厚生代行サービスとの契約など、導入手段・内容を問わず生じる課題です。
複数ある条件を満たし福利厚生費として計上すれば、節税効果を期待できますが、出費そのものはなくなりません。
会社の資金を費やすことになるため、無視できないデメリットとなるでしょう。
くわえて福利厚生サービスを導入・拡張すれば、管理するための手続きが生じ、手間もかかります。
必要になる一定の費用・労力をカバーできるリソースがあるか、あらかじめ確認しておく必要があるでしょう。
4-2. 従業員側のデメリット
スーツを支給・貸与する福利厚生サービスを利用する場合、自分好みの生地・肌触り・形状のものを選べません。
そのため、肌触りに違和感があるとパフォーマンスが落ちてしまう方や、生地が摩耗しやすいため頻繁に買い替えをしたい方の場合は、かえって不便になる可能性もあるでしょう。
また下記のようなケースも想定され、いっそう物品の扱いに気を遣わなければならず、面倒に感じる従業員もいるかもしれません。
- サイズ変更や摩耗による取り替えを頻繁に依頼すると上司の目が気になる
- 貸与品のためクリーニングも会社経由で出さなければならず、やりくりが面倒
5. 福利厚生としてスーツを支給・貸与する際の注意点
福利厚生としてスーツを支給・貸与する際は、3つの注意点を把握したうえで検討を進める必要があります。
「スーツ代そのものを支給しない」「体型に合ったスーツを仕立ててもらう」「メンテナンス方法を周知する」についてご紹介します。
5-1. スーツ代そのものを支給しない
スーツ代の補助として現金を給付すると、手当・給与の扱いとなり、福利厚生費に含められなくなります。
非課税・控除対象のつもりで制度を導入したにもかかわらず、所得税がかかる結果となってしまうでしょう。
現物支給するか「サービス契約を通じた割引適用」という形による、間接的なサポートになるよう注意する必要があります。
5-2. 体型に合ったスーツを仕立ててもらう
スーツ着用時に受ける印象や、摩耗してしまうまでの期間は、体型に合ったスーツかどうかに左右されます。
体型に合わないスーツを着用した場合、生地の過不足により型崩れやすり切れなどができやすく、摩耗が早まってしまいます。
取引先に好印象を与え、かつ長く着用できるスーツを用いるには、オーダーメイドで体型に合ったスーツを仕立てるのが理想です。
とはいえ、オーダーメイドのスーツはやはり高価になりがちです。
綺麗に着用できるスーツを購入してもらうためには、スーツ・革靴・バッグ・ベルトなどを総じて割引できるサポート体制を整える必要があるでしょう。
また価格帯に応じたスーツの特徴を説明し、きちんとした一着を仕立てる重要さを知ってもらうというような前準備も必要です。
5-3. メンテナンス方法を周知する
スーツや革靴は、着用後そのままにしておくとダメージが蓄積してしまいます。
基本的なメンテナンス方法を周知し、高品質のスーツを適切にメンテナンスして着用した方が、体型に合わないスーツを高頻度で買い替えるよりも損をしないことを伝えるとよいでしょう。
メンテナンス方法として下記の方法が挙げられるため、費用補助の制度を導入するときや、入社時に丁寧に説明しておくことが望ましいでしょう。
- 脱いだらすぐに、ポケット内のものを出してハンガーに掛け、陰干しする
- 型崩れや傷みを避けるため、連日着用せず、休ませる日を間に挟む
- 着用後はブラッシングをしてホコリや汚れを落としておく
- シワが付いたらこまめにシワ取りをする
6. スーツを福利厚生の一環として導入するなら「SUIT BENEFIT」がおすすめ
スーツは業務上必要なものにもかかわらず、基本的に、従業員自身で購入してそろえなければなりません。
しかし体型に合った適切なスーツを用意し、長く綺麗な状態で着用していくには、購入時・着用期間ともにお金がかかります。
そのため「なぜ自腹なのか」と不満に思い、少しでも安く済ませようとして低価格のスーツを用意する方も少なくありません。
このような状況に対して「従業員が負担に感じているスーツ代金を、少しでも緩和してあげたい」とお思いの場合は、ぜひ「SUIT BENEFIT」をご確認ください。
「SUIT BENEFIT」は、福利厚生的に活用できる、スーツ・身の回り品を割引価格で購入できるサービスです。
利用人数にかかわらず、一人あたり月額330円(税込)でご利用いただけます。
また「SUIT BENEFIT」なら従業員の家族も利用できるため、金銭的な負担が減り、喜ばれるサービスとなるでしょう。
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7. まとめ
従業員各自が購入するスーツに対して、購入費用の全額を補助するという形では、福利厚生として提供できません。
しかし、制服として同一形状・ロゴ入りのスーツを貸与したり、割引サービスの仕組みを整えたりすれば、従業員の金銭的な負担を軽減できます。
スーツ費用の補助をするメリットとデメリットを確認し、自社ではどのようなサポートができるかを検討してみましょう。